午後のうたたね

ゆるミニマリスト風主婦がふらふら漂う日常

無印良品のペンケース

私が小学6年生だったある日、友達のAちゃんが新しいペンケースに変えていました。

少し大人っぽいシンプルなペンケースでした。

「ペンケース、新しいね」

私が声をかけると、Aちゃんは得意気に

「これからは、ペンケースの中身を無印良品で揃えていくの」

と宣言しました。

そして、その真新しい無印良品の半透明のペンケースをパカリと開けて、カラーペンを2本取り出して、見せてくれました。

Aちゃんには中学生のお姉さんがいるせいか、いつも少し大人っぽい発言をしたり、よく学校で気怠げな雰囲気を出していました。

そこにBちゃんも来て、一緒に話を聞いていました。

無印教に入信したと思われるAちゃんが、「無印良品の素晴らしさ」を布教してくれてました。

ここまでは、平和な話です。

問題は翌週のBちゃんの行動力です。

翌週、Bちゃんが教室で、声をかけてと言わんばかりに机の上に新しいペンケースを置いていました。

それが、Aちゃんと全く同じ無印良品のものだったんです。

さらにBちゃんは、カラーペンも消しゴムもものさしも揃えていました。

BちゃんはAちゃんより先にペンケースまわりを見事コンプリートしてしまっていたのです。

この時のBちゃんの嬉々とした表情と対象的なAちゃんの苦々しい表情が忘れられません。

特にケンカには発展しませんでしたが、こんなときどうすればよかったんでしょうか。

と、道徳の授業みたいな話です。

私は、チャイムが鳴ったことに救われて、自分の席に戻りました。

私は私のお気に入りのペンケースを机の上に出しました。

当時の私のペンケースは応募者全員大サービスの「魔法騎士レイアース」のものです。

特に誰からも褒められることもなく、羨ましがられることもなく、真似されることもなく、かと言って子供っぽいと馬鹿にされることもなく(思っていた人もいるかもしれないけど)、とても気に入っていました。

だから、無印良品の良さを聞いても「ふ〜ん、無印良品が好きなんだね。」ぐらいの気持ちでいました。

AちゃんとBちゃんが仲良く「お揃いだね!」とはならなかったのは残念ですが、ティーンエイジャーに差し掛かる複雑なお年頃は、そんな単純にはいかないのです。

教室の中は色んな気持ちが渦巻いていて、教科書の内容より、5分や10分の休み時間中に起こるコミュニケーションについて教えて欲しかったです。特に変な空気になったときの。

「こんなときどうすればいいの?」という場面で、気の利いた一言を発するような瞬発力を持ち合わせない私の脳みそは、そんな微妙な空気だけを記憶に刻みこむのでした。

ここに書いて、あのときの濁った空気感に成仏してもらおう。

きっと二人は全く覚えてないんだろうな。

あの微妙な空気を一緒に乗り越えた私のお気に入りのペンケースはもう手放してしまったけど、思い出としてはしっかりと残っています。